私たちは食べ物のおいしさを舌だけでなく、五感を使って味わっています。なかでも、お米のねばりとかたさのバランスを左右するのが、アミロースというでんぷんです。以下に多くの人が感じるおいしいご飯のおもな条件をあげました。
視覚 | 色が白く、つやがあり、つぶのかたちが良い。 |
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聴覚 | 噛むとき音がほとんどしない。 |
嗅覚 | 風味がある。 |
味覚 | いくら噛んでも味が変わらず、多少油っこい感じと、なんとなく甘い感じがするが無味に近い。 |
触覚 | あたたかく、ご飯つぶがなめらかでやわらかく、ねばりと弾力がある。 |
お米の主な成分は、水分・でんぷん・たんぱく質・脂質・ミネラルで、これらが一定の数値でバランスよく配合されているお米がおいしいとされています。さらに、でんぷんにはアミロースとアミロペクチンの2種類があり、ねばりとかたさのバランスは、この2種類の比率によって決まります。アミロペクチンが多いお米は、ねばりがあり、ほどよい歯ごたえがあります。一方、アミロースが多いお米はかたく、パサパサしています。しかし、アミロースが少ないとおいしいというわけでもなく、コシヒカリ、ササニシキなどの含有バランスが理想的といわれています。また、同じ品種でも稲が育つ気温によって含有量が異なってくる場合があります。その対策としての品種開発もすでに行われています。
おいしいお米を判定するために、毎年(財)日本穀物検定協会が発表している「米の食味ランキング」があります。厳しい食味検査によって、おいしい米を決定しているものです。また科学的に遠赤外線などで、お米のおいしさを計測する「食味計」も普及しています。
日本
米を炊いて調理する
- すし(酸味をつけたご飯を使った料理)
- 炊き込みご飯(季節の具などを入れて炊いたご飯)
- 茶づけ(ご飯にお茶をかけたもの)
- おにぎり(ご飯を手でまるめたもの)
イタリア・スペイン
米をオリーブ油かバターで炒めて炊く
- パエリア(油で炒めた炊き込みご飯)
- リゾット(米を油で炒めて炊く)
インド・東南アジア
普通は米は炊くか蒸すかで味つけせずに水だけで料理する
- ヤキメシ(米を水で炊いて油で炒める)
ヨーロッパ・アメリカ
米を炒めて直火で炊く
- バターライス(油で炒めた炊き込みご飯)
- ピラフ(油といっしょに味つけをして炊く)
保存に適した米の水分とは
収穫したお米が、私たちに届く前に、乾燥という工程が行われます。これはお米を長い間保存できるようにするもので、お米の水分を低くするものです。お米は水分が高すぎると腐りやすくなるのです。収穫時の水分は、もみで20~30%と高いのですが、乾燥、もみすりで玄米になると、水分が13~16%になります(標準水分は14.0~15.0%)。しかし、水分が低すぎてもダメ。味が悪くなるのです。このため、水分13%以下には落とせません。
生命力を弱めない乾燥の条件
お米の乾燥には、太陽熱による自然乾燥と火力による人工乾燥とがあります。
昔は、収穫時に天日乾燥していました。いまでは、天気に左右されない人工乾燥が普通です。乾燥するときに大事なのは、乾燥の速さです。熱を強くすると速く乾燥するので効率は良いのですが、お米の味はグンと落ちてしまいます。また、急速な乾燥をすれば水分ムラができ、米つぶが割れてしまいます。このようにおいしいお米をつくるためには、ちょうどいい温度と時間で乾燥させることが大切なのです。
おいしく食べられる保存期間は季節によって違う
お米は生きものです。おいしく食べられる保存期間は季節によって違ってきますので、お米を買うときにはこのことを頭に入れておきましょう。
いまは、貯蔵技術が進歩しているので、お店に売られているお米は新米に近い状態にあります。問題なのは、家庭での保存期間。保存状態にもよりますが、白米の場合、常温で1カ月程度と考えればよいでしょう。冬季は2~3カ月、真夏や梅雨時は2~3週間が目安です。また、米袋に表示されている精米年月日を確かめて適量を定期的に買いましょう。
おつきあいしたいお米屋さん3つの条件
- お米屋さんが「米は生きものである」という意識をもっているかどうか。
- こまめに配達してくれるかどうか。
- 表示の見方や品質の特徴などの質問にてきぱき答えてくれるかどうか。
お米のおいしさは、見た目ではなかなかわかりません。「食味計」を使っておいしさを計ることもひとつの目安にはなりますが、お米の保存のしかたや炊き方などちょっとしたことでおいしさは変わってきます。また同じ銘柄のお米でも、産地や収穫した年が異なると味に違いが出てきます。いろいろなお米を食べくらべてみて、一番おいしいと思うお米を探してみましょう。
どのようなお米がブレンドされるのか
香り、ねばり、味、つやなど、どれをとっても満足できるお米はブレンド(混米)の必要がありません。しかし、たいがいのお米はねばりが足りなかったり、味がいまひとつだったりします。そこで、精米工場では、品種や産地の異なる3種類前後のお米を混ぜて、味を平均にするのです。
2種類のお米を1対1でブレンドすると、ほとんどの場合は劣っているほうの味が強く感じられます。良い米7、劣っている米3の割合でブレンドすることで、2つのお米の中間の味になります。
自分でブレンドしてみる
高級なお米か、ブレンド米か、何を選んでも自由。気に入ったお米を数種類買って、わが家のオリジナルブレンドを楽しむのもよいでしょう。その場合、安いお米や古いお米ではおいしくなりません。良質米だけを、少量ずつ混ぜるようにしましょう。
お米には、食品表示法に基づく食品表示基準により、品質に関する表示が義務づけられています。お米を買おうとするときに、袋の中に入っているお米のことが簡単にわかるようにすることが目的です。お米の袋に記されている原料玄米の欄には、産地・品種・産年などが一目でわかるようになっています。ブレンド米の場合は「複数原料米」「ブレンド米」などと表示されます。また、国内産と外国産が使用されている場合には、それぞれ使用量の多い順に割合が表示されます。
お米の情報提供マーク
私たちがいつでも安心しておいしいお米を買えるように、米袋に情報提供マークのついたものがあります。(財)日本穀物検定協会が分析したお米の「食味」「銘柄表示」「安全性」を、パソコンや携帯電話から知ることができます。
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/information/pamphlets/ を加工して作成
一般財団法人 日本穀物検定協会HP「米の情報提供システム」
ご飯をおいしく炊くには、洗米、水加減そして蒸らしなど、いくつかのポイントがあります。
最近は、マイコン型自動炊飯器などにより、おいしいご飯が簡単に炊けるようになりましたが、基本はしっかり身につけておきたいものです。
お米をきちんと計る。
お米は、炊飯器に付属している計量カップ(180ml)で計ります。カップにすりきりまで入れて、きちんと計ることがポイントです。
お米を手早く洗う。
洗米は、お米の表面についているぬかを落とすことが目的です。ゆっくり洗うと、ご飯がぬか臭くなってしまいます。まず、たっぷりの水で数回軽く混ぜるようにして手早く洗い、すぐに水を捨ててください。その後2~3回水を換えて洗い、最後は水気をきちんときりましょう。
水加減を調節する。
水加減でご飯のおいしさが左右されます。炊飯器の目盛はあくまでも目安です。お米を計ったカップできっちりと水の分量も計りましょう。おいしいご飯を炊くための水加減は、白米の場合、洗う前のお米の量の20%増し、新米は10%増しが標準です。軟らかめに炊きたいときには水を多めに、かためが良い場合には水を少なめにすると良いでしょう。
お米に十分水を吸わせる。
ふっくらしたご飯を炊くには、炊く前に十分水に浸して、お米に水分を吸わせることがポイントになります。水に浸しておく時間は水温によって異なります。夏なら30分くらい、冬は2時間くらいがよいでしょう。急ぐ場合は、40~50度のぬるま湯に15~20分ほど浸してから炊くと良いでしょう。
ご飯をじっくり蒸らす。
蒸らすことで、ご飯の粒の水分が均一になります。蒸らしが十分でないと、水っぽいご飯になってしまいます。蒸らし機能のない炊飯器の場合は、スイッチが切れた後、そのまま10~15分ほどおいてください。蒸らしている途中でふたを開けることは、禁物です。
しゃもじでほぐして最後の仕上げ
ご飯を炊きあがったままにしておくと、蒸れ固まってしまいます。蒸らした後はできるだけ早くご飯をほぐしましょう。余分な水分が逃げてふっくらとしたご飯ができあがります。
釜の底の方から掘りおこすようにふんわりと、しゃもじで混ぜます。このとき、ご飯粒をつぶさないように気をつけましょう。
お米の保存には家庭内の比較的涼しい場所を選び(10~15度)、高温・湿気・直射日光を避けることが大切です。
米びつなどの容器に入れている場合は、定期的に米びつを空にして、内側をきれいに拭いて乾燥させましょう。夏場は厚手のビニール袋に入れて、冷蔵庫の野菜室で保存するのも良いでしょう。
炊いたご飯が残ったときは、あたたかいうちにラップで包んで冷凍保存にしておきます。
解凍・加熱したとき、炊きたてと変わらないおいしいご飯が味わえます。ラップには茶碗1杯分単位できっちり包んでおくと、使うときに便利です。(ファスナーつきのフリージングパック(冷凍保存用袋)が便利です。冷凍でも鮮度は日々落ちるので2~3週間以内にいただきましょう。)
上手な冷凍のコツ
電子ジャーなどでご飯を長時間保温しておくと、ご飯が変質して味が落ちてしまいます。保温は10時間程度にしましょう。
できるだけ熱いうちに冷凍すると、鮮度が保たれて良いでしょう。
すしめし
材料
- 米
- カップ3
- 水
- 3~3と1/3カップ
- こんぶ
- 10cm
合わせ酢の分量
- 酢
- 大さじ3杯半~4
- 砂糖
- 大さじ1杯半
- 塩
- 小さじ1杯半
(合わせ酢は別に合わせてあたため、塩、砂糖を溶かし、味をなじませておく。)
つくり方
- まず、お米を洗っておきます。分量の水にこんぶを入れて、30分以上吸水させて、炊飯器のスイッチを入れましょう。
- スイッチが切れたら、10分ほど蒸らしてから、釜からすしおけにご飯を一気にうつします。
- ご飯が熱いうちに、合わせ酢をふりかけて、少し蒸らします。
- 木しゃもじで切るように混ぜながら、うちわか扇風機で手早く冷まして、ご飯に酢の味をなじませます。
ポイント
- すしめしを炊くときの水の量は普通のご飯を炊くときと同じか、やや少なめが目安です。水とこんぶをいっしょに入れて、うま味をいかしましょう。
- ご飯が冷めてしまうと、合わせ酢の味がしみこまないので、熱いうちに手早く、木しゃもじで切るように混ぜます。
おかゆ
おかゆの種類と水の分量
- 全かゆ
- 米1カップ、水5カップ
- 七分がゆ
- 米1カップ、水7カップ
- 五分がゆ
- 米1カップ、水10カップ
- 三分がゆ
- 米1カップ、水20カップ
つくり方
- お米を洗い、土なべか厚手の深いなべで30分以上吸水させておきます。はじめは沸騰するまで中火にします。
その際、ふきこぼれないようふたをずらしておきましょう。 - 沸騰したらふたをもどして、弱火にしたあと、約1時間ほどかきまわさないで、コトコト炊きます。
ポイント
- なべは土なべやゆきひらが理想的です。金属製の場合はできるだけ厚手で、深めのものを用いましょう。
- 沸騰後、底の方から一度だけかき混ぜるのがコツ。後は弱火にして、火加減に気を配りながらコトコト炊きます。
炊き込みご飯
材料
- 米
- カップ3
- 水
- カップ3〜3と1/4
- こんぶ
- 20cm
- 干ししいたけ
- 5枚
- 油揚げ
- 1枚
- にんじん
- 40g
- ごぼう
- 40g
- 黒こんにゃく
- 1/2枚
- 酒
- 大さじ3
- 塩
- 小さじ2/3
- しょうゆ
- 小さじ3
- 砂糖
- 小さじ1
つくり方
- 洗ったお米を約1時間前にこんぶを入れた水につけておきます。
- 油抜きした油揚げ、水でもどしたしいたけ、にんじんをそれぞれ千切りにしておきます。ごぼうはささがきし、酢水にさらしておきます。
- こんにゃくは水から5分間沸騰させた後、拍子木切りにします。 1のお米に調味料と具を加えひと混ぜして、火にかける。
- 自動炊飯器の場合は、沸騰したら手早くひと混ぜして、普通に炊きます。 火を止めてから10分蒸らして、底の方から軽く混ぜます。
ポイント
- 水加減は調味料を含め、お米の10%増しを目安にします。
- お米に調味料を入れる場合は、吸水が終わった後に入れるのがコツです。
- 魚貝類を入れる場合は、水加減が違ってきます。
- 具を入れるタイミングは素材によって違います。