米菓の口どけ感の研究
米菓の口どけ感
米菓には『鬼太鼓』などのかたく歯応えのある商品や、『ソフトサラダ』などのソフトな食感をもつ商品など多くの種類があり、「かたさ」は米菓の代表的な食感と言えるでしょう。米菓の「かたさ」を評価する方法はいくつかあり、圧縮試験や密度測定などが行われています。
しかし、米菓の食感はかたい、やわらかいだけでしょうか?米菓は原料や製法により、様々な食感に変化する食品で、『亀田の柿の種』はいつでも「カリッと」した食感を提供しています。また『ハイハイン』という商品は口の中で「すうっととける」食感を特徴としており、生後7ヵ月ごろからの赤ちゃんにも安心して召し上がっていただけます。これら「カリッと」「すうっととける」などといった単純なかたさだけでは表すことができない米菓食感が数多くある一方、その評価方法はこれまでありませんでした。
研究のきっかけ
『ハイハイン』のすうっととける「口どけ感」は他の米菓と比較してどれだけ溶けやすいのでしょうか?本当に口どけ感は高いのでしょうか?口どけ感の程度を数値化することが出来れば、より良い商品開発につながると考えました。
口どけ感を構造から評価する
まず、『ハイハイン』の内部をX線マイクロCT(Computed Tomography)で調べました。すると大小様々な気泡が複数集まって構成しているスダチ構造※が確認できました。
この構造が口どけ感に影響を与えていると考え、官能評価(人の感覚を使った評価)で口どけ感の異なるとされた11種類の米菓を対象に構造解析を行いました。
スダチ構造を形作る気泡の壁厚や大きさ、数などの情報を入手したところ、気泡サイズの平均と実際に人が食べて感じた口どけ感の官能評価値との間に高い相関がありました。気泡サイズが大きい製品ほど、口どけ感が高く、気泡サイズの小さい製品ほど、食べ応えのある食感になる傾向が分かりました。
※スダチ:米菓断面の気泡構造のこと。米菓やパンの構造評価で使用する言葉。
※『もちの醍醐味』は終売済、『サラダホープ』は新潟県内限定商品。
しかし、気泡サイズのみで口どけ感を評価するには精度が足りないと考え、構造体によって導かれる物理特性を調べました。
口どけ感を物理特性と構造から評価する
私たちが普段食品を食べる際、口の中にいれてから「ひと噛み目」「咀嚼(そしゃく)」「飲み込み」「口残り」といった過程を経ています。
その時それぞれの特徴を最も表わしていると考えた物理特性として、「かたさ」・「吸水性」・「消化性」・「消化後の破片サイズ」を測定しました。
これら物理特性値と先ほどの構造値を用いて、口どけ感を実際の米菓を食べずに表すことが可能な予測評価式を作成しました。
すると、気泡サイズのみで評価した時よりも高精度で、食べた時の口どけ感を予測できるようになりました。(下図)
やはり『ハイハイン』は米菓の中でも特に口どけ感が高いことが科学的に証明できました。
研究者の声
米菓には様々な食感がありますが、かたさ以外のほとんどの食感を数値化する機器分析手法はありません。
また、官能評価は評価者、測定者の労力が大きく、継続して実施するのが難しい評価方法です。この研究成果は、米菓の重要食感の1つである口どけ感を、構造と物理特性から評価可能にしたものです。これからも、かたさだけでは表現しきれない米菓の美味しさを追求し、お客様に、より美味しい商品を届けられるよう研究を続けていきます。