植物性乳酸菌K-2(ペット向け試験)
研究のきっかけ
植物性乳酸菌K-2(Lactobacillus paracasei K71)は、長年のお米の加工・発酵研究の成果により、酒粕から発見された乳酸菌です。
これまでに、お客様の健康に役立つ乳酸菌素材として、抗アレルギー効果や風邪の予防効果など、多くの有効性を確認してきました。その中で、「愛犬のアトピーで悩んでいられる方がいらっしゃる」とのアドバイスから、大切な家族の一員であるペットの健康にも貢献できないかと考え、獣医師との研究をスタートしました。
研究内容
臨床試験 – ㈱ASC 永田 雅彦 獣医師との共同研究
犬アトピー性皮膚炎と診断した5例にプレドニゾロン(薬剤ステロイド)を1日おきに投与し、 3例には「K-2菌」を、2例には対照薬としてセチリジン塩酸塩(抗アレルギー薬)を併用し、 アトピー性皮膚炎症状の補助的治療効果を比較しました。
表1. 獣医師評価:CADESI (Canine Atopic Dermatitis Extent and Severity Index) スコア
グループ | 症例 | 獣医による症状スコア (CADESIスコア) | 改善率 (12週 / 0週) |
|||
---|---|---|---|---|---|---|
0週 | 4週 | 8週 | 12週 | |||
K-2菌 | A-1 | 403 | 110 | 24 | 7 | 98% |
A-2 | 276 | 107 | 17 | 2 | 99% | |
A-3 | 163 | 18 | 12 | 17 | 90% | |
対照薬 | P-1 | 133 | 120 | 57 | 66 | 50% |
P-2 | 149 | 86 | 18 | 50 | 34% |
※スコアが高いほど症状が悪く、16未満で症状が好転またはほぼ消失し、臨床的に「問題ない程度」のこと
全身の皮膚症状を獣医師から診察してもらい、スコア化しました。
試験終了時全例で皮膚症状の緩和が認められました。「K-2菌」群では3例中2例が寛解にまで至りましたが、対照薬群では寛解には至りませんでした。
※寛解:病気そのものは完全に治癒していないが、症状が一時的あるいは永続的に軽減または消失する状態
表2. 飼い主評価:痒みスコア
【痒みスコア】
5:非常に強い痒み / 常に持続的に
4:強い痒み / 持続的に
3:中程度の痒み / 頻繁に
2:軽度の痒み / たまに
1:ごく軽度の痒み / ごくたまに
0:正常な状態
グループ | 症例 | 飼い主による症状スコア(痒みスコア) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
0週 | 4週 | 8週 | 12週 | |||
K-2菌 | A-1 | 5 | 3 | 2 | 2 | |
A-2 | 4 | 2 | 1 | 1 | ||
A-3 | 4 | 2 | 2 | 4 | ||
対照薬 | P-1 | 3 | 3 | 2 | 3 | |
P-2 | 2 | 3 | 2 | 3 |
日々のかゆみを飼い主様に評価してもらい、スコア化しました。
「K-2菌」群は2例においてスコアが減少しましたが、対照薬群ではいずれも減少は認められませんでした。「K-2菌」摂取により飼い主さんに症状の軽減を実感いただきました。
表3. 薬剤ステロイド使用量
グループ | 症例 | 薬 | 投薬量 | ||
---|---|---|---|---|---|
0〜4週 | 4〜8週 | 8〜12週 | |||
K-2菌 | A-1 | 内服ステロイド | 0.5mg/kg 1日おき |
0.5mg/kg 1日おき |
0.25mg/kg 1日おき |
A-2 | 内服ステロイド | 0.5mg/kg 1日おき |
0.375mg/kg 1日おき |
0.25mg/kg 1日おき |
|
A-3 | 内服ステロイド | 0.5mg/kg 1日おき |
0.5mg/kg 1日おき |
0.5mg/kg 1日おき |
|
外用ステロイド | 3滴/1回 7.6g |
3滴/1回 0.7g |
なし | ||
対照薬 | P-1 | 内服ステロイド | 0.5mg/kg 1日おき |
0.5mg/kg 1日おき |
0.5mg/kg 1日おき |
P-2 | 内服ステロイド | 0.5mg/kg 1日おき |
0.5mg/kg 1日おき |
0.5mg/kg 1日おき |
皮膚症状の緩和により「K-2菌」群の2例は薬剤ステロイドの減量に至り、1例は薬剤ステロイドの使用が中止できました。
一方、対照薬群の皮膚病変の良化は緩徐であり、薬剤ステロイドの減量は不可能でした。
※皮膚症状が緩和すれば、薬剤ステロイドの使用量を減量していくことができます。
試験終了時全例で皮膚症状の緩和が認められましたが(図)、「K-2菌」群は対照薬群と比較して、獣医師評価(表1)、飼い主評価(表2)、薬剤ステロイド使用量(表3)のいずれも症状の緩和程度が高い傾向にありました。以上より、「K-2菌」は犬アトピー性皮膚炎の症状緩和に有用であると推察されました。
研究者の声
ペット向けという他分野へのチャレンジでしたが、多くの獣医師の先生、臨床試験に参加していただいた飼い主さんと、 わんちゃんのご協力により、エビデンスを取得することができました。試験を通じてわんちゃんの症状が少しずつ良くなる様子を飼い主さんと共有でき、本当にうれしかったのを覚えています。 ご協力いただいた皆様に感謝し、少しでも愛犬、飼い主さんのアトピーからの苦しみが軽減されることを願っています。